マテリアルな質感と独特な世界観で、ライバルと順位を争うような刺々しい音楽も鳴らず、落ち着いたゲームである。ただし、ゲームの真髄に触れるためには幾つかのハードルを乗り越えなければならない。まず最初に、ドリフト走行の基本を学ばないと攻略は大変難しいと思われる。チュートリアルで操作方法は表示されるが、車両のスピードやハンドル（左右）を切る角度・切り続ける時間は、感覚で掴まないといけない。すぐに壁に激突することになるだろう。視点も上方から見下ろした形なので、ラジコンを操作するように、車両に対して左右のどちらにハンドルを切るべきか混乱することもある。また、すべての操作がタッチ操作であるため、入力が不完全で車両が直進したままになったり（ハンドルが切れていない）、失速してドリフト走行が維持できない場面になることも数え切れない（アクセルが踏めていない）。操作は物理コントローラーの方が優れていると考えるが、総じて慣れれば問題ないのかもしれない。

ドリフト体験に主点を置いた作品。パワーでごまかしたドリフトがほぼできないので、きっかけを得るために、3つ先のカーブを読むような、針に糸を通す操作が要求される。複雑で繊細な操作感が好きな人には諸手を挙げてオススメできるが、リッジレーサーみたいにスイスイドリフトがしたい人にはおすすめできないだろう。（PC版にはMTがあるので、もう少し楽にパワースライドでのねじ伏せができるのだが、スマホはAT固定の為、難易度が遥かに上がっている）

スチームのレビューによると「操作に慣れるまでが"苦行"だが、慣れてしまえば思いのまま」だそうですが、ゲームで苦行を味わう気にはなれません。操作に慣れるまで工夫して楽しませるのがレベルデザインというものだと思います。グラフィックと音楽はセンスありますが、ゲーム内容は開発者の押し付けでセンスがありません。